『きっと可愛い女の子だから』 作者:柳本光晴 評価B

 

 

 

 

私は恋愛マンガが好きで、少女マンガも好きで読んでしまうが、それは男女の恋愛心理を深く掘り下げているところに興味を惹かれるためだ。本作は短編集で、主に高校生の恋愛を扱っている。全5話。

高校生ならではの淡い恋心をわずかなページ数で描いていて、かつ、ストーリー展開もそれなりに面白い。女性があまり美人でないというのも良い。絵があまり上手ではなく、人物のビジュアルが画一的なのが残念である。あと女の子の胸がやたら大きい。

 

 

上手くいかない片思い

 

上手くいく恋もあるし片思いで終わる恋もある。特に初恋の場合は、相手に恋人がいるかどうかが分からないままに妄想を膨らませて撃沈する。「関口さん」「図書館LOVER」などがそれ。

 

特に「関口さん」は、なぜか下校中に出会う、イケメンの同級生・野々原を好きになる関口という女子が主人公。関口は美人じゃないし、目つきが悪くスタイルが良い訳でもなくコミュニケーション力がある訳でもない。勝手に彼を好きになり、自分の部屋に呼びこんで手錠を付けたら二人きりになれるとか、ちょっとダークな女子。ある時、後ろから誰かが付いてきたので、関口はスタンガンで抵抗しようとするが相手は野々原だった。野々原は関口を驚かそうとしたのだ。恐怖と安心感で泣く関口を、野々原は頭を撫でてやる。全く関心のない男にこれをやられるとセクハラだが、恋しい野々原にやられて、気持ちがいっそう高まった関口。

 

しかし片思いはあっけなく破れる。ひょんなことから、野々原に彼女がいたことを知ってしまうのだ。野々原も関口が自分を好きであることを知っていたので、気まずそうな表情をする。野々原が戯れで言ってみた「本を貸して」という言葉をずっと覚えていて、この時に本を貸す。泣きながら「感動モノだからね。涙止まんなくても知らないから…」と言う。彼女がいることを知って恋が破れて、哀しくて切ない自分をさらけだして泣く関口。切ないながらも可愛らしいラストだ。

 

 

不器用な「ギャル子さん」

 

 

高卒後働きたくないという不純な動機で勉強を始めたギャルの島田。一緒に勉強をしてくれる秀才のリョータのことが好きだし、リョータも島田の方が好きだが、奥手のリョータは思いを伝えられないでいる。そして二人とも一所懸命に勉強に励み、成績を上げていく。リョータは東大を目指している。

 

そして一年後、リョータは東大に、島田も東京の私立大に合格する。晴れて二人とも大学生になったが、リョータは島田に告白することができないでいた。「かわいい子ぶんのは女の仕事。告白するのは男の仕事だよ」という島田は、煮え切らないリョータを振って「これを教訓に大学で好きな子みつけたら次はちゃんと自分から告るよーに!」と言って彼の元を去って行く。

 

この振り方は島田の戦略で、リョータが追い掛けて来て、強い思いで島田にアプローチをしてくれることを喚起するための振りなのだった。案の定、リョータは島田を追い掛けて来て、しかも島田がクリスマスプレゼントにリョータにくれた指輪とお揃いの指輪を、プレゼントしてくれた上で付き合って欲しいと言う。

思わぬサプライズも、島田がリョータの行動力を育成したことの成果だろう。女の子って、大人だなあ…と思ってしまう話だった。

 

これらの他にも、「教師と生徒の正しい恋愛」や「保健室にて」なども割と面白い。リアリティを追求するマンガではないので、