『MISSING PARTS the TANTEI STORIES』 メーカー:日本一ソフトウェア 機種:PSP 評価C

 

MISSINGPARTS the TANTEI stories Complete - PSP

MISSINGPARTS the TANTEI stories Complete - PSP

 

オーソドックスだが不親切な推理アドベンチャー

 

 『ミッシングパーツ』は、日本一ソフトウェア販売の推理アドベンチャーゲーム。2002年〜2003年にドリームキャストに発売され、2003年にはPS2、2012年にはPSPに移植された。現在ではPSNを経由してVitaでもプレイできる。

 

ミッシングパーツ』は、オーソドックスなコマンド選択式のゲームである。ただしコマンド総当たりでは解けず、時間の観念やストーリーの分岐などを考慮して推理しないと攻略できないようになっていて難易度は高い。

 

時間の観念のために移動しているとストーリーが進んでしまうことがあるが、ヒントが少ないことが多くストレスに感じる面があった。やり直しが面倒に感じるので、結果的には攻略サイトに頼らざるを得なかった。プレイヤーが考えて攻略できる程度のバランスが必要である。

 

ストーリーの分岐は選択肢によって決定していくものなので、サウンドノベル『街』『かまいたちの夜』などの攻略パターンと同じなのだが選択肢まで簡単に遡ることができないので、セーブデータをいくつも残しておかないといけない。

 

その他のマイナス要素

・最後の6話に向けて、各話のストーリーが集結していく展開は見事。でも、それぞれの話が面白いかというと、そうでもない。3話が素晴らしく、5話がそれに継ぐ。しかし肝心の6話は、真犯人に「ラスボス」感がなく、拍子抜け。ウェイが真犯人で良かったのだが。

 

・夏のストーリーなのに、キャラクターはいつも同じ服装。衣装を変えたイラストを用意する予算がなかったのだろうか。

 

・菜々子や森川など、主人公にちょっかいをかけてくるキャラクターたちとのやりとりが鬱陶しい。毎回毎回、同じやりとりを見せるなと言いたい。

 

・真神恭介は、探偵になったばかりだというのに名探偵という設定。行方不明になる所長に教えを得るとか、なんらかの設定が欲しかったところ。

 

・恋愛要素がほぼゼロ。10代後半から20代後半の若者がキャラクターの大半を占めるのに、恋愛要素が皆無に近い。誰一人、恋人がいないという設定は無理があるだろう。

 

所長代理の京香なんか、ちょっと魅力的なキャラクターなのに主人公は恋愛感情を抱かない。リャンスエとは、少し感情を交えたシーンがあったが、非常に稀なケース。

 

1話「鳴らないオルゴール

1話は、資産家を巡る殺人が描かれる。人がやたら死に過ぎてつまらなかった。但し、潤と浩司兄妹には好印象を持った。

 

2話「赤いカメオ

2話は、1話に輪をかけてつまらない。

 

それと、唯というヒロインがぶりっ子で、私の嫌いなタイプだが、彼女は良い人で終わる。道をなかなか覚えられないし、立ち振る舞いがぶりっ子で嫌だ。

 

3話「託されたペーパーナイフ

3話では、白石哲平やご隠居の苦い過去が暴かれる。哲平は、見た目はチンピラにしか見えないが、ヤクザの使い走りだった過去を持っていた。拳銃を人に向けたことがあり、使い走りといってもヤクザだったのだろう。

 

哲平には何人もの舎弟がいるようだが、特に仲が良いのはヒロ、タカ、エイジの3人。しかしそのうち2人は3話で殺害されてしまう。しかも、殺人を楽しむウェイという狂気的な殺人者の手によって、殺される(下手人は別にいるが)。元ヤクザという過去、そして今も尚、哲平と付き合ってくれる舎弟の死、そして何より、主人公・真神が元ヤクザの哲平と付き合ってくれる温かさが、この3話では描かれる。

 

3話では、リャンスエという中国娘が出てくる。彼女と真神は良い雰囲気になるのだが、リャンスエは、実はウェイに操られた殺人鬼なのだ。そして3話のラストで殺害される。非常に苦いストーリーだが、人の心理を踏み込んで描いており、良い内容だった。

 

4話「傷ついたテディベア

4話は猟奇殺人もの。

病院が舞台で、腹をメスで割かれる医者が出てくる。犯人が直ぐに推測できる。3話で人の心理に踏み込んでいてて面白くなったと思ったら、急にトーンダウンした。どうも『ミッシングパーツ』というゲームは、ストーリーの質に一貫性が伴わない。

 

5話「迷いの懐中時計

いよいよ最終ステージ。犯行現場の近くに犯人の遺留品と思われるものを発見した京香は、それが父親の懐中時計だったことで激しく動揺する。優等生京香の心が揺れる展開が面白かった。ただ、多くのプレイヤーはおそらく、所長の正体を知っていたと思うが、真神は名探偵の割に気づくのが遅い・・・

 

6話「追憶のペンダント

 真犯人は弁護士の諏訪。所長である鳴海誠治の古くからの友人で、真神も心を許している存在だけに、シナリオライターは、真犯人の設定で、意表を突こうと思ったのだろうか?

 

しかし、諏訪は事件にはまともに関わっていなかったし、関わっていなかったからこそ怪しかった。ずっと犬のHPを見ている時点で疑念が湧いた。それと、神出鬼没の変態殺人者ウェイの存在感が圧倒的で、真犯人=諏訪って言われてもラスボス感がなかったなあ。